親の判断能力が下がったとき、預金の手続きや契約を、本人に代わって誰が行うのか。その備えとして知られているのが成年後見制度です。この制度は、2026年6月に改正法が成立しました。この記事では、いま使える現行制度の仕組みと費用、改正で変わる点、施行の時期を整理しました。
成年後見制度とは
認知症や障害などで判断能力が十分でない人の権利や財産を守り、生活を支える制度です。大きく分けて、次の2つがあります。
- 法定後見:判断能力が低下したあとに、家庭裁判所が支援する人を選ぶ制度
- 任意後見:判断能力があるうちに、将来に備えて、自分で支援する人を契約で決めておく制度
法定後見の3つの類型(現行制度)
本人の判断能力の程度によって、3つの類型に分かれています。
| 類型 | 本人の状態 | 支援する人 |
|---|---|---|
| 後見 | 判断能力を欠く常況にある | 成年後見人 |
| 保佐 | 判断能力が著しく不十分 | 保佐人 |
| 補助 | 判断能力が不十分 | 補助人 |
任意後見とは
任意後見は、判断能力があるうちに、信頼できる人(任意後見人)と契約を結んでおく制度です。契約は公正証書で行います。本人の判断能力が低下したときに、家庭裁判所が任意後見監督人を選任して、はじめて効力が生じます。
法定後見の申立てと費用(現行制度)
申立ては、本人の住所地の家庭裁判所に行います。申立てができるのは、本人、配偶者、四親等内の親族などで、市区町村長が申し立てる場合もあります。支援する人は、家庭裁判所が選任します。希望した候補者が、必ず選ばれるとは限りません。
費用の目安は次の通りです。
- 申立手数料:収入印紙800円
- 登記手数料:収入印紙2,600円
- 郵便切手:裁判所ごとに異なります
- 医師の診断書、戸籍・住民票などの書類取得費:数千円程度が目安です
- 鑑定費用:裁判所が必要と判断した場合のみで、数万円〜20万円程度とする解説があります
- 専門職への依頼費用:弁護士や司法書士に申立てを依頼する場合は、別途の報酬がかかります
後見人等の報酬は、法律で一律に決まっているわけではなく、家庭裁判所の審判で決まります。基本報酬の目安は、月額2万円〜6万円程度とされています(裁判所の案内を引用した解説による。管理する財産の額などで異なります)。
現行制度の課題
法務省は、現行制度の課題を次のように説明しています。判断能力を欠く常況にあると認定されると、包括的な代理権・取消権を持つ後見人しか利用できず、本人の自己決定が必要以上に制限されうる、というものです。
2026年の改正(令和8年法律第45号)
2026年6月17日に「民法等の一部を改正する法律」が成立し、6月24日に公布されました。成年後見制度については、次の内容です。
| 項目 | 現行制度 | 改正後 |
|---|---|---|
| 類型 | 後見・保佐・補助の3類型 | 後見と保佐を廃止し、補助の制度に一元化 |
| 支援の範囲 | 類型ごとに決まっている | 本人に必要な事項について、代理権や取消権を付与 |
| 本人の意向 | — | 補助人が、本人に情報を提供し、本人から話を聴くなどして、意向を把握するよう明確化 |
| 利用の終了 | 原則として継続する | 必要がなくなれば終了できると、複数の解説が説明しています(法務省の該当ページでは確認できていません) |
法務省は、この改正により、本人にとって必要な範囲で制度を利用できるようになる、と説明しています。
いつから変わるのか
成年後見制度の見直しは、公布の日(2026年6月24日)から2年6月を超えない範囲内で、政令で定める日に施行されます。遅くとも、2028年12月ごろまでです。具体的な施行日は、今後の政令で決まります。
いま利用できるのは、現行制度です。 法務省民事局の資料では、すでに後見などを利用している人は、基本的には現行法の内容で利用を続けられる(経過措置)とされています。
遺言制度も、同じ法律で見直されます
同じ法律で、遺言制度も見直されています。押印の任意化などは、公布から1年を超えない範囲で政令で定める日、電子データなどで作成して法務局で保管する「保管証書遺言」の創設などは、公布から3年を超えない範囲で政令で定める日に施行されます。いまの遺言書の種類と選び方は、こちらの記事で整理しています。
備えとして考えられる制度
どの制度が合うかは、家族の状況や財産によって変わります。具体的な判断は、弁護士・司法書士・社会福祉士などの専門家や、お住まいの地域の相談窓口にご確認ください。
よくある質問
Q. 改正されたので、いまの成年後見制度はもう使えませんか?
いいえ。改正後の制度は、公布から2年6月以内の政令で定める日に施行されます。それまでは、現行制度を利用できます。
Q. すでに後見を利用している場合は、どうなりますか?
法務省民事局の資料では、基本的には現行法の内容で利用を続けられる(経過措置)とされています。詳細は、今後公表される資料に沿って確認が必要です。
Q. 後見人に、家族を希望できますか?
希望を出すことはできますが、後見人は家庭裁判所が選任します。希望した人が選ばれるとは限りません。
Q. 申立ての費用が払えない場合は?
自治体によっては、申立費用や後見人の報酬を助成する「成年後見制度利用支援事業」があります。対象や条件は、お住まいの市区町村の窓口で案内されています。
まとめ
成年後見制度は、判断能力が十分でない人を支える制度で、現在は後見・保佐・補助の3類型があります。2026年6月に成立した改正法では、後見と保佐を廃止して補助に一元化し、必要な範囲で利用できる仕組みに見直されます。施行は公布から2年6月以内で、いま使えるのは現行制度です。個別の判断は、専門家や自治体の窓口にご確認ください。
参考にした資料:法務省「『民法等の一部を改正する法律』(成年後見及び遺言の制度の見直し)について」(令和8年6月30日)、法務省民事局「成年後見制度の見直し」の資料、裁判所の後見手続の案内、複数の司法書士・行政書士・弁護士事務所の解説。最終更新:2026年10月12日。制度の内容や施行日は、今後の政令などで変わる場合があります。この記事は一般的な情報です。


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