遺言書は、亡くなった後の財産の分け方などを、自分の意思で定めておくための書類です。作り方にはいくつか方式があり、費用や手間、保管の仕方、亡くなった後の手続きが大きく異なります。この記事では、法務局などの公的資料をもとに、主な3つの方法の違いを整理しました。
遺言書の主な方式
遺言書には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。この記事では、利用しやすい前の2つ(自筆証書遺言と公正証書遺言)と、自筆証書遺言を法務局に預ける保管制度を取り上げます。
自筆証書遺言
自分で全文を書いて作る遺言書です。
- 15歳以上で、自分で書くことができれば、いつでも作成できます
- 作成に手数料はかかりません
- 法令上の要件を満たしていなかったり、内容に誤りがあったりすると、無効になることがあります
- 原本は自分で管理する必要があります
- 亡くなった後は、家庭裁判所での検認の手続きが必要です(後述の法務局の保管制度を使った場合は不要です)
法務局の自筆証書遺言書保管制度
自筆証書遺言を、法務局に預けられる制度です。
- 申請の手数料は1通3,900円で、保管料はかかりません
- 全国の法務局(本局・支局等で合計312か所)で利用できます
- 手続には予約が必要で、インターネットまたは電話でできます
- 手続は、遺言者本人が法務局に出向く必要があります
- 申請には、遺言書、申請書、添付書類(本籍と筆頭者の記載のある住民票等)、本人確認書類、手数料が必要です
- 保管された遺言書は、家庭裁判所の検認が不要になります
- 紛失や、利害関係者による破棄・隠匿・改ざんを防げます
- 亡くなった後に通知する相続人等を、1名指定できます(利用条件などは法務局に確認してください)
- 相続人等のうち1人が、遺言書情報証明書の交付を受けたり遺言書を閲覧したりすると、他の相続人等にも保管の事実が通知されます
注意したい点: 法務局が行うのは、全文・日付・氏名の自書や押印の有無といった外形的な確認だけです。遺言の内容が有効か無効かは判断されず、内容についての相談も受けられません。
公正証書遺言
公証人が、2人以上の証人の立会いのもとで作成する遺言書です。
- 公証人が法律の定める方式に従って作成するため、内容について助言を受けられます
- 原本は公証人が保管します
- 家庭裁判所の検認は不要です
- 作成には、財産の価額に応じた手数料がかかります
公証人手数料の目安
公正証書遺言の手数料は、遺言で受け取る人ごとに、その人が受け取る財産の価額で計算し、合計します。2025年10月1日に改定された手数料の目安は次の通りです。
| 財産の価額 | 手数料 |
|---|---|
| 50万円まで | 3,000円 |
| 50万円超〜100万円 | 5,000円 |
| 100万円超〜200万円 | 7,000円 |
| 200万円超〜500万円 | 13,000円 |
| 500万円超〜1,000万円 | 20,000円 |
| 1,000万円超〜3,000万円 | 26,000円 |
| 3,000万円超〜5,000万円 | 33,000円 |
| 5,000万円超〜1億円 | 49,000円 |
遺言で渡す財産の合計が1億円以下の場合は、この表の金額に「遺言加算」として13,000円が加わります。このほか、遺言書の正本・謄本の用紙代などがかかります。
試算例(目安): 5,000万円の財産を1人に渡す場合は、33,000円+遺言加算13,000円で、手数料は合計46,000円となります。2人に半分ずつ渡す場合は、それぞれ2,500万円分として26,000円ずつ計算し、合算してから遺言加算を加えます。
病気などで公証役場に行けない場合は、公証人に出張してもらうことも可能ですが、手数料が加算され、日当や交通費もかかります。証人を専門家に依頼する場合は、別途の報酬がかかることもあります。
3つの方法の比較
| 比較項目 | 自筆証書遺言(自宅保管) | 自筆証書遺言(法務局保管) | 公正証書遺言 |
|---|---|---|---|
| 作成する人 | 本人が全文を自書 | 本人が全文を自書 | 公証人が作成 |
| 費用 | 手数料なし | 保管の申請に3,900円 | 財産額に応じた手数料(数万円〜が目安) |
| 保管 | 本人が管理 | 法務局が保管 | 公証人が保管 |
| 家庭裁判所の検認 | 必要 | 不要 | 不要 |
| 内容の助言 | なし | なし(内容の相談不可) | 公証人から助言を受けられる |
| 無効になるリスク | 方式不備・内容の誤りで無効の可能性 | 外形面の不備は防げるが、内容の有効性は判断されない | 低いとされる(ただし内容によっては争いになる場合もある) |
どの方法を選ぶか考えるときの視点
- 費用と手軽さを重視するなら、自筆証書遺言を自分で作成し、法務局の保管制度を利用する方法があります
- 内容の確実さや、第三者の助言を重視するなら、公正証書遺言が選択肢になります
- 財産が複雑な場合や、相続人同士で争いになりそうな場合は、方式を選ぶ前に、弁護士・司法書士・行政書士などの専門家に相談することをおすすめします。相続人には最低限の取り分(遺留分)が法律で認められているため、内容によっては争いになる可能性があります
遺言書だけではカバーできないこと
遺言書は、亡くなった後の財産の承継を定めるものです。認知症などで判断能力が下がり、預金が引き出せなくなるといった、生前の資産凍結への備えにはなりません。生前の備えには、家族信託や任意後見などの制度があります。
エンディングノートには、法的な効力はありません。書き方や遺言書との違いは、こちらの記事で解説しています。
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よくある質問
Q. 法務局に預ければ、遺言書は有効になりますか?
いいえ。法務局が確認するのは外形的な部分(全文・日付・氏名の自書、押印の有無など)だけで、遺言の内容が有効かどうかは判断されません。内容に不安がある場合は、専門家に確認してください。
Q. 保管した遺言書を、書き直すことはできますか?
遺言は、あとから新しい遺言を作成して変更できるとされています。法務局の保管制度には、保管の申請を撤回する手続きも用意されています。手続きの詳細は法務局に確認してください。
Q. 家に遺言書が見つかったら、すぐ開けてもよいですか?
法務局に預けていない自筆証書遺言は、家庭裁判所での検認の手続きが必要です。見つけた場合は、開封する前に、家庭裁判所や専門家に手続きを確認してください。
Q. 公正証書遺言の証人は、誰に頼めばよいですか?
2人以上の証人の立会いが必要です。手配の方法や費用は、公証役場や専門家に確認してください。
まとめ
遺言書には、自筆証書遺言、法務局に預ける保管制度、公正証書遺言の3つの選択肢があり、費用(3,900円〜数万円)、検認の要否、内容の助言の有無が異なります。法務局の保管制度は費用が抑えられますが、内容の有効性までは確認されません。内容に不安がある場合や、財産・相続人の事情が複雑な場合は、方式を決める前に専門家にご確認ください。
参考にした資料:法務省・各地方法務局「自筆証書遺言書保管制度」の案内資料、日本公証人連合会「公正証書遺言の作成手数料」(公証人手数料令・2025年10月1日改定)、複数の司法書士・行政書士・税理士事務所の解説。最終更新:2026年10月5日。手数料や手続きは変更される場合があるため、最新の内容は法務局・公証役場でご確認ください。この記事は一般的な情報です。


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