身寄りのない方向け、自治体の葬儀生前契約支援とは|横須賀市「エンディングプラン・サポート事業」を例に

生活

頼れる親族がおらず、生活にもゆとりがない高齢者にとって、「自分が亡くなったとき、誰が葬儀や納骨をしてくれるのか」は切実な問題です。この問題に対応するため、自治体が葬儀社と連携し、生前のうちに葬送の契約を支援する取り組みが、全国に広がりつつあります。先駆けである神奈川県横須賀市の「エンディングプラン・サポート事業」を例に、制度の内容を整理しました。

なぜこの事業が生まれたのか

横須賀市でこの事業が始まったきっかけは、身寄りのない独居の方が孤独死し、引き取り手のない遺体として公費で火葬された、という事例だったと伝えられています。法律上、引き取り手のない遺体は、墓地、埋葬等に関する法律第9条に基づき、市区町村が火葬・埋葬を行うことになっています。身寄りがなくても、本人の希望に沿った葬儀や納骨を実現できるようにと始まったのが、この事業です。

事業の仕組み

エンディングプラン・サポート事業は、次のような流れで進みます。

  1. 市の窓口(生活福祉担当課など)に相談する
  2. 希望する葬儀・納骨の形について、市がヒアリングし、プランを一緒に作成する
  3. 市が提携する葬儀社(複数社から選択可能)と、生前に死後事務委任契約を結ぶ
  4. 葬儀・納骨にかかる費用を、契約時に葬儀社へ預託する
  5. 契約後は、市が定期的な安否確認・訪問を行い、万一のときは火葬や収骨に立ち会う

対象となる方

横須賀市公式サイトによると、対象者は次の通りです。

  • 原則として、ひとり暮らしで頼れる身寄りがない方
  • 月収18万円以下
  • 預貯金等が250万円以下程度
  • 固定資産評価額500万円以下程度の不動産までは所有可(それを超える不動産がある場合は対象外)

これらの基準に当てはまらない場合でも、疾病や障害などの事情により対象になることがあるため、市への相談が案内されています。

費用の目安

葬儀・納骨にかかる費用は、契約時に葬儀社へ預託する仕組みです。制度開始当初(2015年7月)の報道では20万6000円程度とされていましたが、2022年度(令和4年度)の資料では26万円という記載も確認できます。生活保護の葬祭費用の基準に合わせて設定されているとされ、金額は見直されている可能性があるため、最新の金額は横須賀市にご確認ください。

どれくらい利用されているか

横須賀市公式サイトによると、市内には1万人を超えるひとり暮らしの高齢者がおり、増加傾向にあります。また、身元が分かっていながら引き取り手のないご遺骨も、年間50体にのぼるとされています。市の高齢者保健福祉計画では、令和6年度から8年度にかけて、この事業の新規登録者数を年間25人ずつ見込むとしています。

リビングウィルも一緒に託せる

希望すれば、延命治療や緩和ケアについての本人の意思(リビングウィル)も、プランに盛り込むことができます。市と葬儀社がその記録を保管し、万一のときに医療機関へ伝える仕組みです。

他の自治体にも広がる動き

同様の仕組みは、愛知県北名古屋市など、他の自治体にも広がっています。前回の記事で紹介した「終活情報登録制度」(情報を登録するだけの仕組み)と比べて、エンディングサポート事業は生前契約まで踏み込む点が特徴です。

  • 終活情報登録制度:緊急連絡先やエンディングノートの保管場所などを登録し、万一のときに開示してもらう仕組み
  • エンディングプラン・サポート事業のような取り組み:葬儀社との生前契約まで踏み込み、実際の葬送を取り仕切ってもらう仕組み

終活情報登録制度については、こちらの記事で詳しく解説しています。

あわせて読みたい:[終活情報登録制度とは?全国の自治体の取り組みと、ひとり暮らしの終活での備え方]
あわせて読みたい:[身元保証人がいない場合どうなる?老後の身元保証を解決する方法]

利用するときの注意点

  • 対象者は限定されています。 誰でも利用できるわけではなく、経済状況や親族の有無など、一定の条件があります
  • お住まいの自治体に制度があるとは限りません。 この種の事業を実施している自治体は、終活情報登録制度に比べても数が少ないとされています。お住まいの自治体の福祉窓口や地域包括支援センターに確認してください
  • 預託金は、葬儀社に対して支払うものです。 制度によって金額や支払先の扱いが異なる可能性があるため、契約前に詳細を確認することが大切です

よくある質問

Q. 対象にならない場合、どうすればいいですか?
対象外の場合は、民間の身元保証サービスや、葬儀の生前契約(葬儀社との直接契約)など、他の選択肢を検討することになります。

Q. 親族がいても利用できますか?
横須賀市の場合、戸籍上の親族がいても、長期間交流がないなど、事実上頼れる親族がいない状況であれば対象に含まれる場合があるとされています。詳しくは窓口でご確認ください。

Q. 自分の住んでいる自治体にこの制度があるか、どう調べればいいですか?
自治体のホームページで「エンディングサポート」「終活支援」などのキーワードで検索するか、高齢福祉の窓口や地域包括支援センターに問い合わせるのが確実です。

まとめ

横須賀市の「エンディングプラン・サポート事業」は、身寄りのない高齢者が、生前のうちに葬儀社と契約を結び、自分の希望に沿った葬送を実現できる仕組みです。対象者には経済状況などの条件があり、同様の制度を持つ自治体はまだ多くありません。お住まいの自治体に制度があるか、まずは窓口で確認することから始めてみてください。

参考にした資料:横須賀市公式サイト、日経BP「新・公民連携最前線」、公明新聞、日本経営協会(NOMA)の解説記事、行政視察記録等の複数の報道・解説記事。最終更新:2026年10月2日。対象条件・金額は制度開始時期の情報を含むため、最新の内容は横須賀市等の自治体に直接ご確認ください。

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